「Copilotの調子が先月と違う気がする」──その感覚、気のせいではないかもしれません。

Microsoftは2026年7月23日(現地時間)、公式ブログで、GitHub CopilotとExcelのAI機能を自社開発モデル「MAI」シリーズへ切り替え始めたと発表しました(Microsoft AI公式ブログ)。これまでOpenAIのGPTやAnthropicのClaudeが担ってきた仕事の一部を、小型で低コストな自社モデルに置き換えていく動きです。

ポイントは、ユーザーの画面は何も変わらないことです。Copilotのボタンも操作も同じまま、サーバー側で「中身のAI」だけが静かに入れ替わります。

何が起きているのか

ITmedia AI+の報道と公式発表を整理すると、状況はこうです。

  • GitHub Copilotでは、軽量コーディングモデル「MAI-Code-1-Flash」が6月から稼働。すでに数百万人の開発者が日常的に使っているとMicrosoftは説明しています
  • Excelでは、強化学習で鍛えた専用MAIモデルが本番稼働中。よく使うタスクの品質は「GPT-5.6と同等」としながらGPU要件が低く、最新世代でないGPU(NVIDIA H100/A100)でも提供できるとしています
  • 今後はCopilot ChatやOutlook、PowerPointにも順次広げる計画です

Microsoftの自社測定では、MAI-Code-1-FlashはVS Code上でコード採用率が「GPT-5.4 Mini」「Claude Haiku 4.5」より約10%高く、トークン消費は約10%少なかったとのこと。ただしこれは自社発表の数値で、第三者による検証はまだありません。

7月上旬には「ExcelとOutlookのプロンプトの一部がすでにMAIに振り分けられている」というBloomberg報道も伝えられており(Office Watch)、今回の公式発表はその流れを裏付けた形です。

なぜ切り替えるのか──理由は明快、お金

Microsoft AI部門トップのムスタファ・スレイマン氏は「我々はAnthropicに多額の支払いをしている。その費用を減らし、最終的には無くすのが目標」と述べたと報じられています。

生成AI機能は、使われるたびに従量コストが発生します。Officeの利用席は世界で膨大な数にのぼります。仮に1回あたり数円のコストでも、掛け算すると巨額です。ナデラCEOは「タスクごとに適切なモデルを使い分け、実行環境ごと最適化することが鍵」と述べ、フロンティアモデル(OpenAI・Anthropicの最上位モデル)は高度な用途に残しつつ、MAIが同等以上の性能を出せるタスクから順に自社モデルへ振り向ける方針を示しました。

つまり全面的な決別ではなく、「高い外部AIは本当に必要なところだけ、日常タスクは安い自社製で」という使い分けです。これは当社が以前取り上げた「モデルルーター」の潮流──どのAIを使うかをAI側が自動で決める流れ──が、世界最大のソフトウェア企業の製品内部で本格化したことを意味します。

利用者にとっての本当の論点

この動きで注目すべきは、性能の優劣よりも「使うAIを自分で選べなくなる」ことです。

  • 同じ操作でも、裏のAIは月ごとに変わりうる。アプリの更新通知もなく、応答の質が「なんとなく変わった」と感じる場面が増える可能性があります
  • どのモデルが処理したかは見えない。自動選択(Auto)が安いモデルを選んでも、ユーザーからは検証できません
  • 一方で、料金は変わらずに応答が速く・安定する方向に働く可能性も十分あります。餅は餅屋の小型特化モデルが、日常タスクでは大型モデルより快適なことは珍しくありません

中小企業はどう付き合うべきか

「中身のAIが選べない時代」への実務的な備えは、次の3つだと考えます。

  1. “モデル名”ではなく“結果”で評価する仕組みを持つ。自社の定番業務(見積書の下書き、表の集計など)でテスト用の課題をいくつか決めておき、月に一度同じ課題を流して品質を確かめる。ツールの中身が変わっても、これだけで劣化にすぐ気づけます
  2. 重要業務は出力チェックを前提に組む。担当AIが入れ替わる以上、「前は正しくできていたから今回も大丈夫」は通用しません。人の確認を挟む工程設計は今後むしろ重要になります
  3. 特定モデル前提の業務マニュアルを作らない。「ChatGPTで」「Claudeで」と手順書にモデル名を書き込むより、「AIにこの形式で依頼し、この基準で確認する」という書き方にしておくと、中身の入れ替わりに強くなります

AIの世界は、モデルの名前で選ぶ時代から、成果と検証で付き合う時代へ移りつつあります。ツールの裏側が見えなくなるほど、手元の検証習慣が効いてきます。

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参考

※本記事は複数の公開情報をもとに作成しています。